- 2025年6月1日14:46:08更新
装いは演出、そして武装〜小説の中の着物〜菊池寛『真珠夫人』第四十七夜
小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。今宵の一冊は、菊池寛著『真珠夫人』。艶やかに美しく、その身を飾る錦繍は“鎧”。﨟たけた貴婦人の、その“装い”は“演出”であり、かつ“武装”でもある。
- LIKE0
- 69view
着物をまなぶ
「着物をまなぶ」というテーマにて、着物に関する様々な《まなび》のコラムをお届けします。
装いは演出、そして武装〜小説の中の着物〜菊池寛『真珠夫人』「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第四十七夜

今宵の一冊は、菊池寛著『真珠夫人』。
改めて取り上げるまでもないほどに知られた名作ですし、映画化やドラマ化もされているので既読の方も多いかと思います(あの色んな意味で評判になった昼ドラは何年くらい前だったかなー?と改めて調べてみたら、20年以上も前でしたね……ちょっと衝撃……)。
自動車事故、乗り合わせた青年の死。その最期を看取ることになった信一郎に託された、豪華な腕時計と不可解な遺言。
青年の血に染まったそれらを捨て置けず、謎を追い始める信一郎の前に現れるのは“泰西の名画から抜け出てきたような”美しい貴婦人、瑠璃子。

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。
今宵の一冊は、菊池寛著『真珠夫人』。艶やかに美しく、その身を飾る錦繍は“鎧”。﨟たけた貴婦人の、その“装い”は“演出”であり、かつ“武装”でもある。白孔雀のような美しさで、サロンに集う男たちの間に君臨し嫣然と微笑んで彼らを弄ぶ、そんな彼女が求めたもの、護りたかったものとは、果たして何だったのだろう―――

着物スタイリスト 秋月洋子
2003年にフリーランスのきものスタイリスト・もの書きとして独立後、雑誌や書籍でのスタイリングと記事執筆のほか、テレビドラマ、CM、映画等でのスタイリング、着付を手がける。着物まわりの小物ブランド『れん』、オリジナルデザインの帯留『九九』など商品プロデュースの他、書家としての側面も持ち自筆の着物や帯のデザインも手掛けている。
著書に『大人のおでかけゆかたコーディネート帖』、『おでかけ着物歳時記』(小学館)、『大人のゆかたスタイルブック』(講談社)などがある。
この記事のライター
- 日本最大級の着物通販サイト