• 2024年5月4日18:43:00更新

あをによし 〜小説の中の着物〜 永井路子『美貌の女帝』

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。今宵の一冊は、永井路子著『美貌の女帝』。馥郁たる天平文化が花開く、平城京。その陰で繰り広げられる権力闘争に、政にその生涯を捧げ生き抜いたひとりの皇女ひめみこの物語。

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あをによし 〜小説の中の着物〜 永井路子『美貌の女帝』「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第三十六夜

今宵の一冊は、永井路子著『美貌の女帝』。

時代ときは奈良。遷都が成ったばかりの、その都“平城京”を主な舞台として繰り広げられる権力闘争を描いた物語です。

主人公は、第44代元正げんしょう天皇となる氷高皇女ひたかのひめみこ。幼い頃から、相手をみつめるとき、黒眸くろめがちの瞳の奥にすみれ色の翳かげがよぎり、みつめられた者が思わず顔を伏せ、ひざまずきたくなるような、そんな気品を備えた美貌の女帝氷高と、後の世で栄華を誇り我が世の春を謳歌することとなる藤原一族(現在放映中の大河ドラマ、ちょうど盛り上がっていますね)、その繁栄の楚を築いたとされる藤原不比等ふじわらのふひととの間に繰り広げられる、皇位継承を巡る闘い。

しかし……改めて着物的な観点から見ると、これが意外と関連が深いんですね。着物好きな人なら、奈良時代と聞けば「正倉院文様」がすぐに浮かぶと思いますが(正倉院とは、聖武天皇ゆかりの品々が納められた宝物殿のことで、その品々に由来する柄が“正倉院文様”)、その聖武天皇に皇位を譲るのが本作の主人公、元正天皇(氷高)。

もちろん、本作中に聖武天皇もしっかり登場します。統治者としては、ちょっと(いや、かなり)困った人ではありますが。そしてその譲位は、政敵であった不比等(この時点ではすでに亡くなっているけれど)の悲願であった藤原氏の血を引く天皇の誕生であり、氷高の孤高の闘いの終焉を意味するものでした。

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。

馥郁たる天平文化が花開く、奈良の都平城京。その陰で繰り広げられる権力闘争に、かげろうの翅はねのごとき薄絹をまとって立ち向かい、政まつりごとにその生涯を捧げ生き抜いたひとりの皇女ひめみこの物語…

小説をモチーフにした素敵なスタイリングのお話…
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