• 2023年7月5日0:56:56更新

羅(うすもの)や 〜小説の中の着物〜 瀬戸内寂聴著『いよよ華やぐ』

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。
今宵の一冊は、瀬戸内寂聴著『いよよ華やぐ』。
ざっくりと荒々しくしなやかで、きっちり巻いていてもゆったりと呼吸ができて、身体を無理なく支えてくれる、おおらかな力強さ。

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「着物をまなぶ」というテーマにて、着物に関する様々な《まなび》のコラムをお届けします。

羅(うすもの)や 〜小説の中の着物〜 瀬戸内寂聴著『いよよ華やぐ』「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第二十六夜

今宵の一冊は、瀬戸内寂聴著『いよよ華やぐ』。

千葉鴨川の老舗旅館の娘として生まれ、96歳で亡くなるまで、明治から平成の4時代を華やかに生き抜いた俳人 鈴木真砂女をモデルに描かれた小説です。

冒頭で取り上げたのは、主人公の藤木阿紗女を含めた仲の良い女性3人のある夏の会話。

俳人であり、また小料理屋の女将として、着物姿で店に立ちくるくると立ち働く日々を送る阿紗女。他の2人も日々それぞれの仕事に励み、美味しい肉が手に入ったと言っては集まってしゃぶしゃぶに舌鼓を打ち(皆驚くほど健啖家で、カツとか鰻とか、かなり重めのメニューもよく登場します。もちろんお酒も)、足繁く温泉や旅行に出かけ、酒食を堪能し、美容、おしゃれ、恋の話で盛り上がる。まさしく”女子会”って感じの風景ですが、その顔ぶれは、91歳の阿紗女を筆頭に、きもの研究家であり、その審美眼を活かしたこだわりの品揃えで通な客を唸らせる呉服店を経営する81歳のゆき、朗らかで愛嬌があり、人気のスナックのママである72歳の珠子…という…

本稿冒頭のイメージ画像でご紹介したのは、榀布(左:しなふ)と楮布(右:こうぞふ)。

作中でゆきが締めていたのは楮布でしたが、ここでは、鈍い艶とハリのあるクールな質感が特徴の能登上布に合わせて榀布の方をセレクト。

というのも、何せこの小説の登場人物たちは、御年91、84、72歳で、仕事も恋も、さまざまな事柄に対する端々しく艶やかな感性も、まさしくバリバリの現役。

本藍で染められた、長寿と繁榮の象徴でもあるこのおおらかな菊唐草が向日葵のようにも見え、あっけらかんとした向日性の主人公、阿紗女のイメージにも重なります。

このコーディネートは、なんだか少し不思議…


小説をモチーフにした素敵なスタイリングのお話…
詳しくは、きものと公式サイトより!↓↓↓

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